シャチには、「海の王者」「海のギャング」など様々な呼び名があります。
英語で「killer whale」と呼ばれるイルカの仲間で最大の種ですが、クジラを殺すことができる数少ない生き物の1つです。
この海の王者に天敵がいるのか気になりますよね。
噂では
天敵?
・マッコウクジラ
・サメ
※ホオジロザメなど
この2種類が唯一の天敵だと言われていますが、あくまでも噂です。
また、人間がシャチを100年で絶滅させると言われてもいます。
シャチを食べる野生動物はいるのか調査した結果をご覧ください。
シャチの天敵【一覧】
シャチの天敵だと言われている一例となります。
シャチの天敵
・細菌
・サメ
・人間
結論ですが、成熟したシャチに天敵は基本的にいません。
産まれたばかりの子供であれば、ホオジロザメなど他の肉食動物に襲われる可能性はあります。
しかし、シャチは家族など群れと一緒に過ごす(単独で一生を過ごす生き物ではない)ため、襲われる可能性も低いと言われています。
後半でも解説しますが、シャチの天敵には細菌も含まれます。
野生のシャチの死因には感染症なども含まれるため、直接シャチを補食する野生動物だけがシャチの天敵に該当する訳ではありません。
細菌がシャチの天敵?
シャチの死因について研究した記録があり、死因の1つは「感染症」です。
2004年から2013年の間に東太平洋とハワイで座礁した53頭の病理報告をレビューし、2001年から2017年に座礁した35頭のデータを用いて、形態計測、脂皮厚、体調、死因との関連を評価した。53例のうち、22例(42%)で死因が特定され、さらに9頭で個体群の健康にとって重要な所見が示された。
子牛(子シャチ)の死亡原因は、感染症、栄養、先天性奇形などであった。亜成牛の死亡原因は外傷、栄養不良、感染症で、成牛(大人のシャチ)の死亡原因は細菌感染、衰弱、鈍的外傷であった。
参考記事:PLOS ONE
シャチや他のクジラは胃潰瘍、皮膚病、腫瘍、心臓病、呼吸器疾患を発症する。
ホジキン病はシャチに見られ、座礁したシャチには冠動脈の深刻な動脈硬化が見られました。
最近報告された疾患には、座礁した子クジラの新生児におけるサルモネラ症や、成体におけるウエスト・ナイル・ウイルスがあります。
内因性レトロウイルスもシャチのゲノム内に記録されています。
これらのウイルスがシャチの個体群の健康にどのような影響を及ぼすかはまだわかっていません。
シャチはウイルス、細菌、真菌の感染症に苦しんでいます。
回虫、サナダムシ、フルクイムなどの寄生虫がシャチの健康に影響を与えることがあります。
ほとんどの場合、寄生虫の蔓延だけで健康なシャチが衰弱することはありませんが、他の病気や怪我によってすでに弱っているシャチには害を及ぼすことがあります。
シャチは最高捕食者である。健康な成体のシャチには、特筆すべき天敵はいない。
このように、シャチの死因には細菌やウイルスによる感染症が関係しているため、シャチにとっては限りなく小さい相手ですが天敵だと言えます。
サメに受けた傷が致命傷に?
シャチにとって、ジョーズのモデルとなったホオジロザメやメジロザメのような凶暴なサメであっても、群れで襲い補食対象とします。
しかし、ニュージーランドのシャチには、クッキーカッターシャーク(ダルマザメ)による傷跡が確認されています。
この傷跡から感染症を起こす可能性もあり、その感染症でシャチが死に至ることがあれば、このクッキーカッターシャークが間接的な天敵だと言えます。
野生のシャチの主な死因は「人間」?
水族館で飼育されているシャチの主な死因は、感染症や肺炎、練習による不慮な事故などになります。
⇒【シャチの平均寿命】子供の死亡率が43%?野生下と水族館での違いなど
しかし、野生のシャチの主な死因には、人間が直接関係していることも少なくありません。
重要な偶発所見としては、サルコシストーシスとトキソプラズマ症の併発、子宮平滑筋腫、脊椎骨膜増殖、クッキーカッターシャーク(Isistius sp.)の咬傷、過剰な歯の摩耗、釣り針の誤飲などがあった。
人間関係に関連した死はすべての年齢層で見られた。参考記事:PLOS ONE
このように、人間の娯楽や漁業が影響で野生のシャチが死んでいることが明らかになっています。
たとえ海の王者でも、漁業用の網にかかれば簡単には抜け出せません。
また、船の座礁による燃料漏れや産業廃棄物などの影響を受けている可能性も十分に考えられます。
さらに、特定の地域ではシャチは漁師から「魚を盗む生き物」だと認識されています。
ニュージーランドやブラジルなどでは、シャチは縄漁で獲れた魚を狙いにきます。
とくにブラジルでは、1日に捕れるメカジキの約50%以上がシャチに食べられている可能性があると言われています。
過去には、怒った漁師達がシャチの駆除を要求したこともありました。
1958年には、日本政府がシャチに対し50口径銃の使用を許可しました。
日本沖では年間平均で約60頭のシャチが捕獲され、肉は市場で売られ、脂も油として活用されました。さらに皮は靴底にされることもあったと聞きます。
シャチの天敵がマッコウクジラの噂について
「シャチの天敵はマッコウクジラだけだ」との噂を耳にしたことがあるかもしれません。
シロナガスクジラの食性は、主にオキアミなどの動物性プランクトンです。
※80%はイカ類と言われている
しかし、マッコウクジラの主食は、ダイオウイカやヤリイカなどのイカ類です。
他にもタコやエビなどの甲殻類、スケソウダラなどの魚類も食べますが、シャチを好んで襲うことはないと言われています。
反対にマッコウクジラにとってシャチは天敵に含まれます。
子供はもちろん、大人ですらシャチの群れに襲われると言われているほどです。
マッコウクジラにもイカを襲って食べるほどの歯があり、体長もシャチの2倍以上あるため、シャチにとっては簡単な相手ではありませんが、チームプレーや俊敏性などの差が大きいのでしょう。
また、ザトウクジラは仲間を守るためにシャチを襲うこともあります。
なぜ天敵の少ないシャチが絶滅危惧種?
シャチにとって天敵はほとんどいないことが分かりました。
ライオンやトラであっても、意外と天敵はたくさんいます。
子ライオンであれば尚更天敵の数は増えます。
しかし、シャチの場合は群れで生活することもあり、子供のシャチにとって危険性も低く、大人のシャチを襲う野生動物は基本的にいません。
では、なぜ天敵がほとんどいないシャチが絶滅危惧種に指定されているのか?
この問題にも人間が関係しています。
シャチは生態系がいくつかに分かれます。
ポイント
・沿岸に定住し、サケなどを捕食する群れ
・遠洋でクジラやアザラシなどを狩る群れ
・これらの中間を位置する群れ
しかし、どの群れに対してもエサ不足が深刻な問題となり、さらにシャチは食物連鎖の頂点にいる生き物です。
餌が体内に蓄積していた化学物質や水銀などは、シャチの体内にも蓄積されます。
また、米国の科学雑誌「Science」では、PCB(ポリ塩化ビフェニール)により100年後には日本近海のシャチが絶滅するとも論文で発表されているほどです。
※PCBはダイオキシン類の一種である
研究によると、健康なメスのシャチは15〜40歳くらいまで3年ごとに1頭のペースで子供を産みます。
しかし、PCBの影響により生殖ホルモンなどが乱れた場合、出生率が低下するだけでなく、子供のシャチがもつ免疫力まで低下する可能性があると警告されています。
そのため、早急に対策を進めなければ、シャチは地球上から姿を消してしまう可能性はゼロとは言えません。
参考記事:ヤフーニュース
シャチにとって最大の天敵は人間
シャチを直接襲って餌にしている野生動物はいません。
食物連鎖の頂点に君臨する海の王者です。
しかし、シャチの死因には感染症などが含まれ、細菌やウイルスが天敵に含まれてきます。
また、シャチにとって最大の天敵は人間です。
シャチの出生率や子供の免疫力などにも悪影響を与えています。
シャチの絶滅の運命を左右するのは私達人間であり、シャチを救えるのも人間だけです。
私達はこの問題をもっと重く受け止め、一人一人が地球環境に目を向けていかなければいけません。